世界における予防接種の状況は、制度や推奨されるワクチンの種類、接種方法などにおいて日本といくつかの大きな違いがあります。
主な比較ポイントを整理しました。
1. 接種方法の違い:筋肉内接種 vs 皮下接種
世界と日本の最も顕著な違いの一つは、注射を打つ「場所」と「深さ」です。
- 世界(主流):筋肉内接種欧米をはじめとする多くの国では、ワクチンの多くを筋肉内に接種します。筋肉は血管が豊富で免疫細胞が集まりやすいため、免疫がつきやすく、腫れなどの副反応も抑えられるという考え方が一般的です。
- 日本:皮下接種日本では伝統的に、皮膚のすぐ下の脂肪層に打つ皮下接種が主流です。かつて筋肉内注射による健康被害(大腿四頭筋拘縮症)が社会問題になった歴史的背景があり、現在も多くのワクチンで皮下接種が指定されています。
2. 混合ワクチンの普及
一度の注射で複数の病気を予防する「混合ワクチン」の活用状況も異なります。
- 世界: 5種混合(百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ、ヒブ)や、さらにB型肝炎を加えた6種混合ワクチンが多くの先進国で標準的に使われています。
- 日本: 2024年4月からようやく「5種混合ワクチン」が定期接種に導入されました。世界に比べると、多種混合の導入スピードはやや慎重な傾向にあります。
3. 同時接種に対する考え方
- 世界: 「必要なワクチンはできるだけ早く、まとめて打つ」という考え方が強く、一度の受診で4〜5本以上の同時接種を行うことも珍しくありません。
- 日本: かつては接種間隔に厳しい制限がありましたが、近年は国際基準に合わせて緩和され、日本小児科学会も同時接種を推奨するようになっています。
4. 種類と接種率の比較(例:HPVワクチン)
特定の疾患に対する向き合い方にも差が見られます。
| 項目 | 世界(欧米など) | 日本 |
| HPVワクチン | 接種率70〜80%を超える国も多い(学校での集団接種など) | 積極的勧奨の中止期間を経て、現在は回復傾向にあるが依然として低い |
| B型肝炎 | 出生後すぐ(24時間以内)に1回目を打つのが世界標準 | 生後2ヶ月からの定期接種が一般的 |
日本のワクチン事情は、以前は「ワクチン・ギャップ」と呼ばれ世界から遅れていると指摘されていましたが、近年は定期接種の種類が増え、世界標準にかなり近づいています。
ただ、「筋肉内接種が一般的でないこと」や、「新しいワクチンの承認・導入スピード」については、依然として国際的な標準とは異なる日本独自のステップを踏んでいるのが現状です。